静岡県西部遠江三十三観音霊場保存会の公式ホームページです

気まぐれな巡礼案内①

投稿日:2016/10/14 カテゴリー:瀧生山 永寳寺内慈眼寺

25番松島の札所と境内を紹介します。 寺伝や「歩き観音」については、既に記載されていますので略します。

菊川の流れは、粟が岳を水源に小鮒川を過ぎ、小夜の中山東の谷 諏訪原西の谷の水を集めながら菊川の宿をぬけ、深谷へと下ります。小夜の中山の南に火剣山(菊川市最高峰282.6m)があり、松島は東側登山口になり、観音堂の五十メートル南は菊川市境です。

観音堂の下に立ちますと石段の右側に「慈眼視衆生」と標された石が立っています。正面の石段を登ります、この石段は三十三あり、一段ごとに観音様がお迎えくださるよう思いを込め造られています。慈眼視衆生の意味が理解できます。 寺名となった「岩松寺」の「※とかえりの松」は石段を上がりきった東側の手水鉢の辺りにあったようです。西側には保存会が配した沙羅樹が剪定され、三十年の年輪を刻んでいます。本堂西南側に「歩き観音」の石像がお祀りされた小堂 本堂には正観音様が祀られています。本尊様については、いくつかの説もあるようですが、長い歴史の中で その時々の人々に護られてきた重さを考えた時、さして問題にはなりません。特筆すべきは、この地区の人たちが秋の彼岸には当番を決め三十三か所を必ず巡礼し続けていることです。歩きから自転車に車にと変遷はありますが、学ばなければならないと常々感じています。

さて、どこの寺の境内にも墓地があることは当たり前の風景ですが、ここも共同墓地として祀られています。この墓の中に「山有りて 我心有り 依って我 山に登る」と刻まれた墓碑があります。二十五才で逝った若きクライマーの碑です。彼はカナダのパフィン島にあるトール山(1675m)西壁(1250mの世界最長の断崖絶壁)の日本初登頂を目指し、その隊員として、練習場北アルプス前穂高岳(3090m)北尾根屏風岩(日本三大岩稜と呼ばれる)を登攀中亡くなった。 日本登攀クラブがトール西壁に初登頂したのが1984年ですから、彼の死後5年後となる。この碑文は彼の遺品を整理していた父親が日記帳に記されているのを見つけ刻したもので 父母のつらく切ない思いがこめられています。

〇御詠歌

※十かえりの 松に涼しき 風立ちて 谷に妙なる 音は菊水

※山本石峰氏は「十返も百返も巡礼すると、涼しい風で煩悩の熱は取れて谷間から美妙な梵音が聞こえる、はて不思議と視れば、菊川の水音だ。」ときしています。

山里の静かな佇まいの25番札所にゆっくりとお参りしたいものです。まもなく国道473号線が国一バイパスに連結され、菊川宿の四十数メートル上を通る橋脚工事も始まりました。

※山本石峰:気まぐれな巡礼案内⑭(2017・10/1公開)で案内しましたが、それ以前の公開案内時は未発見でしたので、追加筆します。

山本茂三郎:明治二年十月十六日小笠郡新野村出生(1869)~昭和三十五年一月十日没(1960)・昭和26年「遠江三十三所巡礼物語」を著す。他菊川町「河城村郷土史」編集

※とかえり・・・十返り(百年に一度咲く松の花が十回咲くことから、長い年月を意味する)※太文字は下の写真参照

img_2634  img_2639 img_2645img_2640 img_26472016・10/14公開

 

お彼岸の巡礼へのいざない

投稿日:2016/09/19 カテゴリー:瀧生山 永寳寺内慈眼寺

~プロローグ~

今はもう 30になる

遥か 20年もの そのむかし

中学生になりたての 男子がひとり 四国遍路の旅に出た。

夏と冬 長い休みを利用して。炎天 極寒 遍路の長い道のりを

ひたすら ひとりで かみしめた。

心に あふれるものたちと 向き合い 対話を重ねつつ・・・

空と海と そして風。 行く手に広がる風景に

それらは 次第に 昇華されて いったことだろう。

あたたかな「お接待」を受けながら。

歩いて あるいて 辿り着く。 札所ごとの その中で

寂かに 佛と向き合えば

もうすでにこのままで 救われ 護られて「在る」ことを

ふっと感じたことだろう。

見えないけれど糧となり、何かのたびに よみがえる・・・

 

しがない昔の話です。

何かの機縁にでもなれば・・・と思いつつ。

 

昨今では、お洒落な服を身にまとい

朱印の収集を目的にした「御朱印ガール」などと呼ばれる

人たちのことも 見聞きするようになってきました。

姿、形や きっかけは、それぞれ自由なスタイルで。

興味をもたれた方は是非一度、札所を巡ってみてください。

いつでも、お待ちしています。 ゆっくり佛の前に座ったら

生きる力が湧いてくる

ありがとうの気持ちが 沁みてくる・・・。

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